RPA展開に必要なRDLCとは?RDLCを利用する目的と事例を紹介!

RPAは近年発展を続け、様々な企業がRPAを導入しています。社会全体としてRPAを利用する流れの中で、どのようにRPAを展開するべきなのか迷うことが多いかと思われます。 その際に必要となるのがRDLC(RPA Development Life Cycle)という考え方です。今回はRDLCとは何なのか、事例を踏まえて説明いたします。

RDLC(RPA Development Life Cycle)とは?

RDLC(RPA Development Life Cycle)とは、RPAの自動化導入を効果的に実現するための枠組みを指します

RDLCは定義された目的や役割を持つ各フェーズで構成されています。

RDLCの標準化のメリット

RDLCを標準化のさせることは以下のような5つのメリットをもたらします。

効率性の向上

標準化されたプロセスは、開発チームが効率的に作業を進めるのに役立ちます。統一された手順とベストプラクティスに従うことで、無駄な時間やリソースの浪費を最小限に抑えることができます。

品質の向上

標準化されたライフサイクルは、品質管理を強化します。開発、テスト、デプロイメントの各段階で統一された手順と基準を使用することで、品質の一貫性と信頼性を確保できます。

リスクの低減

標準化された開発プロセスは、リスクを最小限に抑えるのに役立ちます。適切に文書化された手順に従うことで、潜在的な問題やエラーを事前に特定し、修正することができます。

拡張性の向上

標準化されたライフサイクルは、将来の自動化プロジェクトの拡張性を高めます。一度確立されたフレームワークや手順は、新しいプロセスの追加や変更に柔軟に対応できるようになります。

コラボレーションの促進

標準化されたプロセスは、開発チームや関係者間のコラボレーションを容易にします。共通の理解と統一された言語を持つことで、コミュニケーションの障壁を取り除き、チームの協力を促進します。

これらの利点により、RPA Development Life Cycle(RDLC)の標準化は、自動化プロジェクトの成功と持続可能性を向上させることができます。

RDLCの各プロセスとその目的

実際にRDLCの各プロセスがどのような目的で行われているのか?またどのように実施したのか?という事例を踏まえてご説明いたします

要件整理

目的:自動化の候補を洗い出し、効果・コストの分析結果を元に自動化の優先度づけを行うこと

<自動化対象業務選定基準の例> 
以下の選定基準を基に自動化業務を選定します。

  1. 年間削減時間
    年間どれくらいの時間が削減されるか事前に試算します。
    大きな削減効果が見込まれる業務ほど優先度は高くなり、削減効果が少ない業務は優先度を低くし、場合によっては、自動化業務対象外となります。
  2. エラー削減
    業務実行における作業者によるばらつきが軽減できるか確認します。
    後続業務を含めた全体的なフロー改善ができるかも検討し、フローを改善することでの業務プロセス全体への影響も加味して判断します。
  3. ミッションクリティカル業務が効率化されるか?
    組織や企業の存続に欠かせない業務が自動化され、より効率化されることで実行時間の短縮だけでなく、業務内でボトルネックとなっている作業を軽減することができるか?
  4. 社員の士気向上につながるか?
    普段の業務品質を改善したり、仕事が殺到する状況を回避できたりする状態となれば、社員の仕事に対するやる気・生産性の向上が見込まれます。
  5. 顧客満足度の向上に繋がるか
    業務の効率化による会社イメージの改善や自動化を実施している実績に繋がるかを検討します。
  6. 法令が順守されているか
    コンプライアンスが守られた状態での自動化が可能か検討します。

自社で定めた基準に基づき、自動化候補業務を洗い出し、ドキュメント化します。
(自動化対象業務選定フォーマットの例)

ドキュメント化することで視覚的にわかりやすく、自動化業務の選定と優先順位付けについて社内でプロジェクトのスコープと目標が共有され、開発チームや関係者がプロジェクトの方向性を理解しやすくなります。

スプリント計画

目的:正確な現行プロセスのヒヤリングを元に、見積もり・スケジュール・スコープ策定を行うこと

<事例>

  1. 自動化対象の業務から実際に手作業で行っている業務をヒヤリング
    (As-Is業務プロセスドキュメントの作成)
  2. As-Is業務プロセスドキュメントの内容からどこまでの範囲を自動化するかの検討やAs-Isにおいて行われていた3M(無理・無駄・ムラ」を取り除き、自動化後のあるべき姿を検討し、ドキュメント化します。
    (To-Be業務プロセスの作成)
    <As-Is/To-Beプロセスドキュメントの例>
  1. スプリント計画の立案
    スプリント計画は一定期間(通常は1~4週間)で達成するべき目標の設定、スプリントバックログ(開発する機能やタスクのリスト)の決定、各バックログのタスクおよび工数の見積もり、工数に基づくスケジュール、リソースのアサインを決定します。
    このようにすることで実装すべき内容を明確化し、進捗管理を容易にします。

<スプリントバックログの例>

Bot設計・開発・UAT・リリース

目的:開発効率が良く、かつ再利用性・柔軟性の高い、Botを設計すること
   作成されたBotが開発標準に準拠していること、および品質を検証すること

Bot設計からリリースまでについては以下のサイトに詳しく記載しております。 以下をご確認ください

Bot運用

目的:ハイパーケア期間中に、運用担当者に対し、計画的に引き継ぎを実施すること

 <Bot運用時に決めておくことの例>

例:CoE  :スケジュール登録/モニタリング等
  IT部門 :システムへのアクセス権管理/リリース判定(インフラ関係)等
  業務部門:リリース判定(アウトプット)等

CoEの詳細については下記をご参照下さい。

RPAでCoEを構築する目的とその役割とは

<運用時の役割分担表の例>

効果&ROI測定

目的:予定していた自動化の効果、ROIが達成されているか確認すること

導入ツールのレポートツールやダッシュボードを利用して、自動化による削減効果とROIを可視化します。

その結果として業務自動化の推進に対する貢献に応じて、表彰を行うこともRPA活用の推進に効果があります。

<ROI計算する際に使用する指標の例>

  1. 工数削減成果指標
    自動化プロセス数
    自動化プロセスによる工数削減時間
  2. エラー発生率による削減効果指標
    手作業でのエラー発生率の低減率
    エラー修正作業の工数削減時間
  3. その他の削減効果
    自動化による各デバイス/アプリケーションライセンス等の削減金額

上記のような直接的に試算可能な指標以外にも、プロセスの文書化による内部監査工数の削減や少ない人的リソースで運用を可能にすることによる採用コスト削減効果などを各会社の状況により成果に含めることもあります。

RDLCをRPA推進で採用する際に

上記でご紹介したのは、ベストプラクティスの一例であって、そのまま採用されるとは限らなりません。

各プロセスの選定基準に含む内容や優先順位のつけ方は各企業によって異なることもあります。

重要なのはルールを標準化することで、社内で同じ基準でRPAを管理すること、削減効果を比較しやすい環境を構築することにあります。

このコンテンツを読んで、自社に合ったRPA推進方法を検討したい方はぜひお問い合わせください。

本記事の執筆者

ペネトレイター株式会社 杉山