RPAでロボットを作成する時の仕様書の作り方

 当たり前の事ですが、一切の変更なく同じ手順が永遠に続く業務はほぼありません。使用しているソフトウェアのVersion UPやUIの変更、マスタ/オブジェクト/フィールドの追加や変更、確認/承認フローの変更等ビジネスを行う上で業務フローの変更は日常茶飯事です。ゆえにRPAツールを使いロボットを作成する際には仕様書及び変更履歴を残すことは非常に重要です。

 私がこの記事を書く直前まで参加していた案件は部署や個人単位で行われたRPA導入により乱立したロボットをIT部門が正しく管理するというプロジェクトでした。

  1.  全てのロボットを把握する
  2.  ロボットが正しく作られているかを確認する(リスクある場合は修正を実施)
  3.  ロボットの仕様書は決められたフォーマットで作成する(仕様書が無い場合は新規作成)
  4.  その仕様書は決められた場所に格納する

 具体的に私たちが行った業務は上記になります。

 その中でも重要なのが仕様書になるので今回はロボットの仕様書の作り方、運用方法について書いていきます。

1. なぜ仕様書が必要なのか

 RPAでロボットを作成する際に、仕様書を作成する時間がもったいないという理由で、本来の作業手順を元にロボットを作成しながらRPAの仕様を確定していく開発者がいます。

 仕様書がないままロボットを作成するほうが、実は「もっと時間がもったいない」ことになります。

<仕様書を作成しないままロボットを作成するデメリット>

  1.  自動化のゴールが明確になっていないため認識相違によるトラブルが発生しやすい
  2.  自動化の業務フローが見えないため、要件の抜け漏れが発生しやすい
  3.  要件変更が発生する際に、ロボットの仕様を調査するのに時間がかかる

 ゴールが明確になっていないトラブルの対応時間は見積しづらく、予め予想することもできず、発生ベースでの対応になってしまいますので、プロジェクトの全体スケジュールを立てるのも難しいでしょう。

しかし、仕様書を作成することによって、上記デメリットの課題を解消することができます。

<仕様書を作成するメリット>

  1.  自動化のゴールを開発者とステークホルダーで合意できる
  2.  自動化前後の業務フローを資産として残せる
  3.  明確なゴールと業務フローを元に開発/メンテナンスを実施するため、開発/調査の時間を短縮できる

 プロジェクトの参画メンバー全員が同じ目線に揃うことで、認識相違によるトラブルを防ぐことができ、スケジュール通りに自動化を進めることができることが多いです。

2. ロボット作成における仕様書の要素

 私たちペネトレイター株式会社のRPAロボットの仕様書は以下の要素から成り立ちます

  1.  ヒアリングシート(ASISフロー)
  2.  設計書(プロセス定義書)
  3.  UT・UAT仕様書(テスト仕様書)

 RPAの仕様書として、一つは「何をしてほしいのか」を調査し、記録した「ヒアリングシート」になります。これはRPAを作る人と、自動化してほしい人は別々でいるため、認識の相違を起こさないためのものです。

 もう一つは「何をどうしているのか」が記載された、いわゆる説明書的な存在の仕様書です。弊社ではこちらを設計書またはプロセス定義書と呼んでいます。

 さらに、作成したロボットを「正常に動くのか」「考えられる異常ケースはなんなのか」を検証結果とともに記載された、テストするためのテスト仕様書もありますが、今回は説明を省きます。

 ASISフローは既存の業務手順書で代用するケースも多いので、今回は②設計書(プロセス定義書)を中心に、弊社のテンプレートを使って作り方をお伝えしたいと思います。

3. ペネトレイター株式会社の設計書(プロセス定義書)の作り方

<設計書(プロセス定義書)の作り方>

 設計書は基本的に4つのシートで構成されています。

  1.  業務概要
  2.  業務フロー図
  3.  業務フロー詳細
  4.  変更履歴

 それぞれのシートの要素と具体的な作り方をご紹介いたします。

  1.  業務概要
     自動化対象業務の概要、担当部署・担当者、業務実施の前提条件・制約事項、入出力などの要素を記載いたします。
     特に入出力が一番重要で、業務に関わるファイル、ウェブサイト、アプリケーション、システムをすべて網羅して記載していきます。ここに記載した内容は後に業務フロー図でも使います。
  2.  業務フロー図
     「フロー図」とは図形や矢印を用いて、業務の流れを整理した設計図のことです。図形を使用することで、高い視認性があり、業務の流れを確認するのに最適です。
  3.  業務フロー詳細
     作成したフロー図の各プロセスの詳細条件/設定内容は「業務フロー詳細」のシートに記入します。
     例えば、ウェブサイトのURL、使用するファイルのフォルダパスや命名ルール、メール送信の宛先など、フロー図の各プロセスの解説を記載します。
  4.  変更履歴
     ロボットの作成・変更の都度記載することで、だれがいつ変更したか後から確認することができます。

<弊社の「業務概要」のテンプレートのサンプル画面>

<弊社の「業務フロー図」のテンプレートのサンプル画面>

このテンプレートは以下のように使用します:

  1.  処理のフェーズを大項目として分ける処理名は全体プロセスの大枠を記載する
  2.  大項目内の各操作は小項目として分けるシステム項目は利用するシステム名をすべて記載する
  3.  処理内容は各プロセスの具体的な手順を記載し、I/O欄に操作対象のシステムやドキュメントと点線と矢印で繋げて表記する
     ※I/O欄に記載するシステムやドキュメントの番号は業務概要シートの入出力を参照する
  4.  各プロセスの詳細手順は右上の凡例の図形を使って記載する

<弊社の「業務フロー詳細」のテンプレートのサンプル画面>

 ※業務フロー詳細の「処理名」と「処理内容」は業務フローの同じ項目名の内容を記載します。

<弊社の「変更履歴」のテンプレートのサンプル画面>

 今回ご紹介させていただいた弊社の設計書テンプレートを無料でダウンロードしていただきます。以下のフォームよりお問い合わせいただければ、ダウンロードURLを返信にてお送りいたします。

4.仕様書作成時にチェックするポイント

 業務の効率化のためのRPAであり、意味のない仕様書ではかえって非効率化RPAを作ってしまします。

 そのため、仕様書作成に当たり、以下のポイントをチェックする必要があります。

  1.  MECEに作れているか。
    抜け漏れがなく、重複した設計をしていないか確認すること。
  2.  ECRSの原則を適応できる部分がないか。
    ロボットと人との操作では違いがあるので、無くせるか・まとめられるか・入れ替えて効率化できるか・単純にできないかを考えること。
  3.  ロボットで実行可能か。
    設計だけでは机上の空論なので、実行可能な設計をしているかサンプルのロボットを作成して逐次確認すること。

 以上のポイントに則り仕様書を作成することで、ロボット開発がよりスムーズになり、ロボット作成後も仕様書を確認することで改修箇所を容易に特定できます。

5.RPAの仕様書の運用についてもっと知りたい方

 RPAを導入したが仕様書を作成していない・これからRPAの導入を検討しているがどのように仕様書を作るのかもっと知りたいという方はぜひ弊社までご相談ください。

 今回ご紹介させていただいた弊社の設計書テンプレートを無料でダウンロードしていただきます。以下のフォームよりお問い合わせいただければ、ダウンロードURLを返信にてお送りいたします。お気軽にお申込みください。

本記事の執筆者

ペネトレイター株式会社 髙橋