引き継いだRPAの仕様を読み解く方法とは?

RPAの業務内容が変更になったことから、別の開発者が作成したRPAを改修する場面があります。その際に、別の開発者が作成したRPAがわかりづらく、仕様を読み取れず困ったことはありませんか?わかりづらいRPAの仕様を読み取るには、時間がかかったり、複雑で理解する作業自体ストレスに感じたりすることも多いでしょう。そこで今回は効率よくロボットの内容からRPAの仕様を読み解くための方法をお伝えします。

RPAの仕様を読み解く上で確認すること

仕様書を確認する

RPAの仕様をわかりやすくまとめた資料があれば、まずはその資料を確認することが仕様を理解するための最短ルートです。

とはいえ、「仕様書がない」「仕様書はあるが、分かりにくく理解できない」場合もあるので、その際は次の手順に進めてください。

ロボット内のコメントを参照する

RPAの中で補足説明としてコメントを残す機能や設定をまとめるグループステップ機能があります。どの部分でなにをやっているのかを理解するのに効果的になります。

しかし、開発標準がなく、正しいコメントを追加していないロボットに関しては、「コメントが入っていない」「コメントがあってもわかりにくい」場合があります。

ロボットのロジックを確認する

    設計書とロボット内のコメントで読み取り切れない内容は、ロボットのロジックを確認します。

    上記のように、いきなりロボットのロジックを確認するのではなく、仕様書と照らし合わせながらロジックを理解しつつ、コメントで処理箇所を特定してから、差分のロジックを確認することで、より短時間でRPAの仕組みを理解することができます。

    次に、ロボットのロジックから仕様を読み取る方法をご紹介します。

    RPAの仕様を読み取る方法、事例を踏まえて解説!

    実際に仕様書がない業務を改修した事例を踏まえ、読み取る方法を説明いたします。

    今回の事例では社内システムに変更が発生し、既存のロボットの仕様ではエラーが発生するため、ロボットの改修が必要でした。しかし、既存のロボットを作成した担当者の方が退職されており、仕様書が無く、コメントの記載も少ないため、何から手をつけていいか分からないというお困りごとのご相談でした。

    ロボットの成果物を明確にする

      ロボットを実行した後に「どうなっていればいいのか」をまず理解することが重要です。
      細かいロボットの仕様を確認する前に、どのような成果物がアウトプットされるのかを押さえておくと、一見無駄に見えるような操作や意図が分かりにくい設定があっても、成果物作成するにどう繋がるのかを理解しやすくなります。

      そのため、いきなりロボットの中身を確認するではなく、まずは成果物を確認することが大切です。

      • 処理例

      今回のロボット改修の理由は、登録先の社内システムが変更されたことです。よって、ロボットのロジックを確認する前に、まずは以下の情報を確認しました。

      1. 登録対象画面の変更点
      1. 登録完了後の確認方法

      ①は変更点を押さえて、ロボットのロジックに対象箇所を特定しやすくなります。

      ②は業務ユーザーの確認観点からして、ロボットがどこまでやれば要件に満たすのかがわかります。

      ロボットの親子構成を整理する

          ほとんどのRPAは複数のロボットが構成されています。

          親となるロボットはどれなのか、呼び出しの対象ロボットはどれなのか、それぞれの役割はなんなのか、関連するロボットをリストアップして全体像を把握しておくことで、確認の抜け漏れを防ぐことができます。

          • 処理例

          各ロボットを呼び出すメイン処理のロボットがあるので、メイン処理のロボットから呼び出す各役割のロボットの順番を書き出して、親子構造に並べ整理しました。

          親:000000_○○業務_Main

                 子:000000_○○業務_MailDownLoad

              子:000000_○○業務_ TSRDataDownLoad

              子:000000_○○業務_CompanySystemRegister

          確認の目的を明確にしてロボットのロジックを確認する

            仕様書がある場合は、仕様書をロボットと照らし合わせてロジックを確認するのが一番です。

            今回のように、仕様書がない場合は、ロボットの呼び出し順番に確認し、それぞれのロボットの処理流れを書き出すことをお勧めいたします。

            ただし、どちらにしても、「改修箇所に影響しそうな」部分を中心に詳しく理解し、「影響範囲ではないが、念のための確認」部分は軽く眺めるぐらいが十分です。目的に併せて強弱をつけてロボットのロジックを確認するのは効率化の一つです。

            • 処理例
            1. 上記整理した関連ロボットの一覧から、改修対象を特定する

            親:000000_○○業務_Main

                   子:000000_○○業務_MailDownLoad

                子:000000_○○業務_ TSRDataDownLoad

                子:000000_○○業務_CompanySystemRegister ※改修対象

             ※改修対象以外は「影響範囲があるか」を念のため確認します。

            1. 改修対象の処理流れを書き出す
            • 処理流れ例
            1. A画面に遷移
            1. 【ル―プ】出力データの各行を順番に処理

              2-1.A列の顧客IDを入力して検索

              2-2.顧客IDと紐づいたデータ行のB~I列のデータを登録

              2-3.保存⇒登録⇒完了を押す

            1. B画面に遷移して登録状況一覧を出力

            このように、ロジックの階層がわかるように処理の流れを書き出すことで、ロボットへの理解が深め、改修箇所を特定することが容易になります。また、処理の流れが可視化できることによって、影響範囲の抜け漏れを防ぐことができます。

              各入出力ファイルの流れを理解する

              ロボットの処理流れから、各種ファイルのやり取りが発生するとわかります。ファイルの流れもロジック同様、どこでどのファイルが入力として使用されるのか、どのタイミングでどのファイルが出力/作成されるのか、こちらも明確に書き出すことで、業務全体への理解や改修箇所への影響がわかります。

              • 処理例

               親:000000_○○業務Main

               ⇒入力ファイル:Config(Excel)

                各処理ロボットの呼び出し、ファイルパスやメールアドレス等の初期値が記載されている

               子:000000○○業務MailDownLoad

               ⇒出力ファイル:メールに添付された依頼ファイル

                (Excel) 登録対象の企業情報が含まれている

               子:000000○○業務_ TSRDataDownLoad 

               ⇒出力ファイル:東京商工リサーチからダウンロードした企業情報ファイル(PDF)

                社内システムに登録する情報が入っている

               子:000000_○○業務_CompanySystemRegister

               ⇒ダウンロードしたデータを取得し、社内システムに登録する。
               ⇒入力ファイル:①メールに添付された依頼ファイル(Excel) ※企業IDを特定
                       ②東京商工リサーチからダウンロードした企業情報ファイル(PDF)

                ※企業IDに紐づいた情報を取得
                出力ファイル:社内システムへの登録状況を記録したファイル(Excel)

              上記の流れでRPAの処理内容を確認することで、抜け漏れなくロボットの仕様を確認することができ、改修箇所や改修内容を特定することも容易になります。

              <補足>読み取りづらいRPAを引継ぎしないために

              今回の事例で上げたケースのように、ロボットから仕様を読み解く作業は、仕様書と適切なコメントが用意されていれば、本来必要のなかった作業です。

              そのため、改修を行う際は、以下の2点を同時に行うことを推奨します。

              仕様書を第三者から見てもわかるように作成する

                仕様書を作成する目的の一つに、ロボットの仕様を引継ぐことも含まれます。そのため誰がみても読みやすい仕様書を作成する必要があります。

                より詳しい作成方法は「RPAでロボットを作成する時の仕様書の作り方」のコンテンツを確認してください。

                開発標準を守る

                  開発時で守るべきルールや基準のことを開発標準と言います。開発標準を定める目的としてはRPAを使用する組織内で個々のRPAの可読性をあげ、社内展開・引継ぎをスムーズに行うためとなります。そのため可読性のあるコメント記載することも含まれています。なので、文章は短く一目で伝わりやすい内容を記載するにすることがポイントになります。

                  これらを実施することで、誰もがわかるようなロボットを開発することができます。メンテナンス時間の短縮も、RPAによる自動化の削減効果に繋がりますので、ぜひご参考してください。

                  企業内で使用するRPAは、共通のルールで整理し、俗人化しないことが重要!

                  どのような処理を実施しているかわからないRPAは目的(実現すべきアウトプット)から業務内容を整理することで、理解することが可能です。また細かな処理内容から確認するのではなく、処理の流れから確認することで、RPAの処理全体をつかむことができます。

                  また、社内ルールを統一化することで俗人化しないメンテナンスが可能になり、長期的にロボットを運用することができますので、まだ仕様書や開発標準が社内にない場合は作成することを推奨します。 効果的なRPAを作成するためのノウハウをもっと知りたい方、RPAによる自動化でお困りごとがある方、ぜひお気軽に弊社へお問い合わせください。内容に合わせて詳しくご提案させていただきます

                  本記事の執筆者

                  ペネトレイター株式会社 杉山 葵