SAPは現在多くの企業に導入されており、RPAによる業務プロセスの自動化を進められている企業様でもSAPの操作を含む業務が含まれることも多いのではないでしょうか。
SAPのバージョンアップを行う際は、RPAによるSAPの操作を含むプロセスについてもバージョンアップへの対応が必要になります。
そこで今回はSAPバージョンアップの際にRPA側ではどのような対応が必要なのか、どんな手順で改修を行っていくのかといった、全体の流れをご紹介して行こうと思います。
目次
SAPバージョンアップの際にはRPA側は対応が必要なのか
SAPバージョンアップの際にはRPA側も対応が必要!
まず大前提としてSAPバージョンアップによりSAP側の仕様やUIが変わっている、変わっていないに関わらず、SAPバージョンアップ対応の際には新しいSAP環境で正常にSAPの操作ができるのかを調査する必要があります。
その為、SAPバージョンアップ対応の際には必ずRPA側でも対応が必要となります。
RPA側ではどのような対応が想定されるのか
よく発生する対応ポイントを覚えておこう!
次にここではSAPバージョンアップ対応の際によく発生する対応ポイントをいくつかご紹介しようと思います。
SAPGUIの変更
まず一つ目にご紹介するのはSAPGUIの変更です。
大前提の知識としてSAP画面上の文字列や入力欄、チェックボックスなどのユーザーが操作しやすいようにデザインされた全ての要素を総称してSAPGUI(Graphical User Interface)と呼びます。
この要素はひとつひとつを判別する為にGUIが割り振られており、Automation 360などのRPAツールでは、このGUIを指定することで画面上のどこを操作するのかを判断しています。
しかし、このIDはSAPのバージョンアップの際に変更されることがあり、新しいSAPの環境ではGUIが正しくない原因により、SAPの操作でエラーになってしまうことが多々にあります。
その為、SAPバージョンアップ後には最新のGUIを確認し、変更された場合はGUIを修正する必要があります。
上記とは違う方法で画面上のどこを操作するのかを判断している一例としてUiPathを紹介します。
UiPathではキャプチャした画像から生成されるセレクターと呼ばれる値を利用して画面上のどのフィールドを操作するのかを判別していますが、こちらもGUIがアップデートされた際は上手く認識してくれないことがあるので、こちらも改修対象の一つです。
ウィンドウ名の変更
次にご紹介するのはウィンドウ名の変更です。
SAPの画面のタイトルをウィンドウ名と呼んでいます。
SAPのバージョンアップにより、一部のウィンドウ名が変更される場合があります。
RPAでSAPGUI以外の方法でSAPの画面を操作する際に、ウィンドウ名を設定して操作対象の画面を特定しています。
SAPバージョンアップする際に、ウィンドウ名が変わっていたらRPAでも改修しないと、ロボットが正しく操作できない可能性があります。
コードの調整、改修
新しいSAP環境に移行すると今まで動作していたロボットが上手く動かなくなることがあります。
例えばウィンドウが開くまでに時間がかかるようになってしまった為にロボットが上手く認識できなくなってしまったり、ページと偏移先のページとの間に別のウィンドウが挟まるようになっていたりと旧環境と新環境の環境差異により様々なエラーが発生します。
こういった新しいSAP環境起因のエラーの調整、改修もよく発生します。
SAPバージョンアップに伴うRPA修正の流れ
RPA側対応の流れについて理解しよう!
次にSAPバージョンアップのRPA対応の流れについて解説していきたいと思います。
SAPバージョンアップによる影響範囲の調査
RPAで使われている各種SAP画面の変更箇所を調査します。
特に注意すべき箇所は、ウィンドウタイトル、UI画面(項目名、項目位置)、SAPGUI、この3種類の要素の変更有無になります。
RPAで利用する対象画面を一覧にして調査することも重要ですが、SAPのバージョンアップを対応するチームとの連携も大事です。
システムのバージョンアップする際に、新旧画面の差異比較の資料を準備して確認するのは一般的なので、その差異比較資料から確認したほうが影響範囲の調査も簡易になります。
RPA毎の利用画面と影響範囲を一覧にすることで、ロボット毎の改修工数を見積もることができます。RPA改修の優先順位を立てて、スケジュールを設定することができます。
ロボット改修&単体テスト
通常のロボット改修は改修すべき箇所を改修してから、テストデータを流して単体テストを実施する流れになりますが、SAPバージョンアップの改修に関しては、3-1.で調査した影響範囲以外、ロボットを実行してうまく行かない箇所をピックアップするのも手段の一つです。
ロボット改修&単体テストの流れは以下の通りお勧めいたします。
- 調査で特定した部分を改修する(例:ウィンドウタイトル、UIの項目名と項目位置)
- テストデータを流して、エラーになる箇所を洗い出す(例:SAPGUI)
- ②で洗い出したエラー箇所を改修する
- 処理の全パターンを洗い出し、全パターンのテストデータを準備する
- 全パターンのテストデータを単体テスト実施する
同じSAP画面を使っていても、データパターンによって処理する箇所が異なる場合があります。上記手順を実施していただきますと、SAP各種画面の操作に抜け漏れなく、確認することができます。
UAT&ドキュメント更新
SAPのバージョンアップによるロボットの改修に関しては、基本的に仕様の変更は行わない方針ですので、UATの実施とドキュメントの更新は場合によって必要ないかもしれません。
稀にSAP画面が大幅変わっており、項目の増減により業務の流れが変更される場合があります。その際はUATを実施するようにお勧めいたします。
ドキュメント類は企業の運用ルールによって変わるので、変更箇所に応じて対象のドキュメントを更新します。
本番リリース、ハイパーケア
改修したロボットを本番環境に乗せて、通常のRPA改修フロー同様、本番環境での運用は一定期間を設けて、ロボットが安定して正しく実行できるのかを確認いたします。
端末、SAPの環境が変わることによって、微調整が必要な場合がありますので、ハイパーケアの見守り期間は迅速に対応するように、予め対応体制を備えるとスムーズになるかと思います。
最後に
今回は私がSAPバージョンアップの際に実施しているSAP改修の流れ、対応方法についてご紹介してきました。
SAPバージョンアップだけではなく、OSやブラウザのアップデート方法なども知りたいという方はこちらをご覧ください。
ブラウザ(Google ChromeやMicrosoft Edge)のバージョンアップ時のエラー対応
Windows10からWindows11へ切り替えた際のRPAの対応
RPAで自動化に組み込まれているシステムがバージョンアップする場合の改修する判断と改修手順の流れ
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ペネトレイター株式会社 石川