業務フロー整理、ロボット開発をする上での大事な考え方

ロボット開発を始める上で、業務フローを整備することは必要不可欠です。

RPAは人が行っている業務を自動化してくれますが、必ずしも従来の作業工程をそのままロボット開発に進めることが正解とは限りません。人間がやっていた作業にはこれまでの過去の慣性等により効率的ではないフローになっている可能性があるからです。

この記事ではMECE(ミーシー)やECRS(改善の4原則)の考え方を基に、ロボットを開発するにあたって普段人が作業している業務フローをどのように整理していく方法があるのかについてご紹介いたします。

RPA開発におけるMECE(ミーシー)/ECRS(改善の4原則)の考え方の重要性

「漏れなく、無駄なく、簡潔な」設計を意識してロボットを設計しましょう

ロボットを開発する上で安定したロボット かつ シンプルなロボットを構築することが重要です。

では安定 かつ シンプルなロボットを構築するにはどのように考えればいいのか、それは「MECE(ミーシー)」と「ECRS(改善の4原則)」の考え方に沿って構築します。

ロボット開発においてMECE(ミーシー)やECRS(改善の4原則)の考え方が重要な理由は以下二点です。

メンテナンス性の向上のため

メンテナンス性の向上は、RPAを利用する目的の一つとして、「業務の可視化」を行うことが挙げられます。そのために、開発したRPAのロボットも、開発した人だけではなく、RPAの知識を持っているほかの開発者でもメンテナンスできるように、「ロボットの可視化」が大事になってきます。

ロボットの可視化」はロボットを実際に開発した以外の人が対象のロボットを見ても設定がわかる状態にすることです。具体的な方法としては、コメントやステップを活用して、ロボットの中でどんな処理を行っているのか記載したり、処理の流れを記載した設計書を作成することがあげられます。

特にロボットの設計書は、開発者自身がわかるように記載するのではなく、誰でもわかるようにMECE(ミーシー)・ECRS(改善の4原則)を用いて整理し、簡潔にまとめることでロボットの可視化を実現できます。

初めてそのロボットを見た人でも仕様がわかるようにしておくことで、メンテナンス性があがるため、「仕様がわからなくて、使わなくなった」野良ロボットを減らすこともできます。

ロボットの複雑化を回避するため

ロボットの複雑化を回避することは、RPAを運用する上で安定したロボットを構築することが大事になってきます。

ロボットは設定処理が多ければ多いほど動作が不安定になったり、業務フロー整理の際に漏れが発生している状態で既存のロボットに設定を追加すると、可読性やメンテナンスのし易さが低下したりします。そのため、複数回同じ処理を行う場合は、同じ設定を複数回設定することは避け、繰り返し処理などを使用して可能な限り無駄のないシンプルなロボットを開発することが大事です。、

このように、RPA開発をする上でMECE(ミーシー)/ECRS(改善の4原則)の考えはとても重要になってきます。

次のフェーズでは、漏れなく、無駄なく、簡潔な設計をするために必要なMECE(ミーシー)、ECRS(改善の4原則)とは具体的にどんな考え方なのかについてご紹介します。


MECE(ミーシー)/ECRS(改善の4原則)とは

MECE(ミーシー)/ECRS(改善の4原則)の観点を用いることで「漏れなく、重複なく」を実現

前のフェーズでご紹介した二つの考え方はそれぞれ、MECE(ミーシー)は「漏れなく」、ECRS(改善の4原則)は「無駄なく、簡潔に」を軸に考えます。 より具体的なそれぞれ考え方についてご紹介します。

MECE(ミーシー)とは「Mutually(お互いに)」「Exclusive(重複せず)」「Collectively(全体に)」 「Exhaustive(漏れがない)」の頭文字をとった言葉で、「漏れなく、重複なく」を意味します。

例えば、ロボットを構築する前に全体像である成果物がどのようになっていればいいのか、事前に業務の中で重複している処理はどのくらいあるのかなどを分かった状態で構築すると、全体的に抜け漏れ、重複の処理を防ぐことができます。

次にECRS(改善の4原則)とは「Eliminate(排除)」「Combine(統合)」「Rearrange(順序入れ替え)」「Simplify(簡素化)」の頭文字を取った言葉で、「無駄なく、簡潔に」を意味します。

例えば業務フローを整理する際に、不要な処理は削除できないか、同じ処理を別のタイミングで実施する場合はまとめて一回で処理できないか、より簡素化にできないかを観点に考えます。

実際にMECE(ミーシー)やECRS(改善の4原則)を考える上でのポイントは以下三点です。

全体像を把握する

まずロボットの成果物がどのようになっていればいいのかを把握した状態で、業務フロー全体の整理を行います。

業務フロー全体を俯瞰した上で、抜け漏れや重複が発生していないことを確認してから、開発作業に取り掛かります。

フェーズごとで段階的に確認する

次にすべて開発完了してからMECE(ミーシー)やECRS(改善の4原則)の考えに沿って業務フローに漏れや重複がないかを確認するのではなく、開発段階で当初の仕様で万一抜け漏れが発生していた場合は再度業務フロー全体を確認し、改めて抜け漏れや重複が発生しないか確認するようにしましょう

第三者にレビューしてもらう

最後に全体のロボットの設定を第三者にレビューしてもらいます。

業務フロー通りに漏れなく設定できているか、重複している処理はないかを第三者にレビューしてもらうことによって、より抜け漏れなどの発生を防ぐことができます。

上記三点のポイントを抑えることで、効率的に動作するロボット開発を実現することができます。

次のフェーズでは、実際に業務フロー整理やロボット開発をするときはどのようにMECE(ミーシー)やECRS(改善の4原則)の考えを意識して行えばいいのか、事例を基にご紹介します。

MECE(ミーシー)/ECRS(改善の4原則)を意識した業務フロー整理・ロボット開発とは?

ロボットは無駄なく、一番安定する設計をすることが大事!

ロボットを構築する際は、人が行っている手順をそのままロボットに設定するのではなく、MECE(ミーシー)/ECRS(改善の4原則)の考えに沿って業務フロー整理、ロボット開発をすることがとても大切になります。

ここでは人が作業する流れと、MECE(ミーシー)/ECRS(改善の4原則)の考えに沿って構築したロボットの流れの違いについて三つの事例を基に紹介します。

事例一:MECE(ミーシー)の「Exclusive(重複せず)」とECRS(改善の4原則)の「Combine(統合)」、「Rearrange(順序入れ替え)」の考え方を基に、重複した処理の設計方法

ロボットを構築する際に何度も同じ処理を設定すると、設定した分エラーが発生する際に修正が発生します。

同じ操作を複数箇所に設定する場合、メンテナンスが発生する際に複数回を修正する手間が発生し、ロボットの稼働時間が長くなるため、エラーに繋がりやすいです。

そのため、同じ処理を行っている場合は可能な限り一回にまとめて設計することをお勧めいたします。

今回の事例は「作業手順を変更することで重複な設定を統合する」ポイントを紹介します。

<業務例>

異なるシステムに同じExcelから取得した値を登録する

<人が作業する流れ>

  1. システム①にログイン
  2. システム①でExcelから取得した値を入力してログアウト
  3. システム②にログイン
  4. システム②でシステム①と同じExcelから取得した値を入力してログアウト

人が普段事例一のような業務を行う場合は、②と④でデータを登録するために、二回に分けてデータをコピーします。ロボットで設定する場合は、この二回に分けてデータを取得する作業を以下の流れで一か所にまとめることを実現します。

<ロボットで構築する流れ>

  1. Excelから必要な値を取得する
  2. システム①にログインし、データを入力し、ログアウト
  3. システム②にログインし、データを入力し、ログアウト

上記①のように、異なるシステムにログインする前に、予め必要な値を取得することで、データの取得を一回にまとめることができました。処理を一回にまとめることはMECE(ミーシー) の「Exclusive(重複せず)」とECRS(改善の4原則)の「Combine(統合)」で、処理順番を変更したのはECRS(改善の4原則)の「Rearrange(順序入れ替え)」の考え方をもとに設計しました。

また、処理を一回にまとめることができない、複数箇所に処理が必要な場合は、「共通部品」という共通で呼び出されて実行できる処理ロボットを活用すると、ロボットの開発やメンテナンスが簡潔にできます。

事例二:MECE(ミーシー)の「Exhaustive(漏れがない)」、ECRS(改善の4原則)の「Simplify(簡素化)」の考え方の活用

分岐条件が発生する業務に関しては、条件を整理したうえで、簡潔に設計することが重要となります。ただし、「簡潔」ばかりに考えて「条件の設定漏れ」や「行き先の整理漏れ」が発生すると、処理が不十分になってしまう可能性があります。

今回の事例では「漏れなく簡潔に設計する」ポイントを紹介します。

<業務例>

Excelのデータに複数の条件を判断してシステムに登録する

<条件>

  1. 経理部の男性は画面Aに姓名を登録する
  2. 経理部の女性は画面Bに姓名を登録する
  3. 人事部の男性は画面Bに姓名を登録する
  4. 人事部の女性は画面Cに姓名を登録する

<人が作業する流れ>

  1. システムにログイン
  2. 下記条件1~4ごとに登録画面を開いてデータを入力する
    1. 経理部の男性は画面Aに姓名を入力する
    2. 経理部の女性は画面Bに姓名を入力する
    3. 人事部の男性は画面Aに姓名を入力する
    4. 人事部の女性は画面Bに姓名を入力する
    5. 技術部は男女問わず画面Cに姓名を入力する
  3. システムからログアウト

ロボットの設計をする際に、上記の通りに設定すると、似たような条件を複数回設定することになり、設計が煩雑になってしまいます。条件を整理して以下のように流れを調整すれば、より簡潔に設計できます。

<ロボットで構築する流れ>

  1. システムにログイン
  2. 順番に条件を確認し、該当登録画面を開いてデータを入力する(図面参照)
  3. システムからログアウト

上記のように、一見煩雑な条件のルールを整理し、漏れなく条件を網羅したうえで設計をシンプルにすることができます。まさにMECE(ミーシー)の「Exhaustive(漏れがない)」、ECRS(改善の4原則)の「Simplify(簡素化)」の考え方ではないでしょうか。

今回ご紹介した事例のように、MECE(ミーシー)やECRS(改善の4原則)の考えを基に業務フロー整理を行った上でロボット開発をすることによって、よりメンテナンス性の高い、シンプルなロボットを構築することができます。

RPAツールを導入したが、既存の業務フローが複雑すぎてどのように業務フロー整理してロボットを構築したらいいかわからないなどのお悩みがあれば、業務フロー整備のお手伝いやロボット開発の代行等様々なご提案をさせていただきます。

お困りの方がいらっしゃいましたら是非弊社までお問合せ下さい。

本記事の執筆者

ペネトレイター株式会社 星野